コラム

育児休業期間と年次有給休暇にまつわるお話

・W(ウィズ)さん
『私は、令和2年4月1日に正社員(1日8時間・週5日勤務)として入社しました。
特に欠勤等もなく1年ぐらい働いた頃に妊娠が判明し、令和3年10月中旬から産前休業に入り、出産、産後休業、育児休業を経て、令和4年11月に以前と同じ働き方で職場復帰しました。ふと、年次有給休暇の日数を確認してみると残日数が「11日」となっていました。これって正しいのでしょうか?』

Wさんのように、育児休業等長期間にわたり休業した従業員が職場復帰した場合、年次有給休暇の付与についてどのように考えるのでしょうか?
整理していきましょう。

(1)年次有給休暇の付与要件
年次有給休暇の付与要件として
・雇い入れの日から6か月継続して勤務すること
・全所定労働日の8割以上出勤したこと というものがあります。

通常通り出勤している日はもちろん「出勤したこと」となりますが、実際は出勤していなくても「出勤したものとして取り扱う日」というものも存在します。

注意点として、実は「出勤したものとして取り扱う日」には、以下の期間を含みます!!
・産前産後の女性が労働基準法第65条の規定により休業した日
・育児・介護休業法に基づき育児休業または介護休業した日

Wさんは長期間にわたり休業していますが休業期間は上記に該当しますので、「全所定労働日の8割以上出勤したこと」を満たすことになるのです。

(2)年次有給休暇の請求権の時効と残日数について
では、Wさんの年次有給休暇の残日数は何日になるのでしょうか?

Wさんは令和2年4月1日から働き始め、そこから6か月後の令和2年10月1日に年次有給休暇が付与されますが、復帰までの期間について整理すると以下の通りとなります。
・令和2年10月1日 10日付与
・令和3年10月1日 11日付与
・令和4年10月1日 12日付与
この時、育児休業期間中である令和4年10月1日にも年次有給休暇が付与されることに注意が必要です。

では、仮に入社してから一日も年次有給休暇を取得していなかった場合(※本当は取得してほしいですが!!)、復帰時に年次有給休暇の残日数が11日となっていたのは正しいのでしょうか?

年次有給休暇の請求権の時効は、発生の日から2年間です。
Wさんの例で考えると、復帰時点において、令和2年10月1日に発生した年次有給休暇はすでに時効消滅しておりますが、その後発生した令和3年・令和4年に付与されたものは時効を迎えておりませんので、残日数は「23日」となります。

Wさんの会社は、育児休業期間中に年次有給休暇が付与されることを認識していなかったため、残日数に差異が生じたようです。

(3)その他よくある質問
Q.年次有給休暇はパートタイム労働者や非常勤の職員にも付与されるのでしょうか?
A.正社員やパートタイムなどの区分はなく、一定の要件を満たしたすべての労働者に対して、年次有給休暇を与えなければなりません。
ただし、付与日数については週所定労働日数や労働時間によって異なります。

Q.育児休業期間中に年次有給休暇を取得したいのですが問題ないでしょうか?
A.年次有給休暇は「労働義務のある日についてのみ」請求できるものです。
 すでに育児休業の申出を行った後であれば、育児休業期間はすでに労働の義務がありませんので、原則、年次有給休暇は申請することはできません。
ただし、育児休業の申出を行う前にあらかじめ年次有給休暇の取得が決定している場合には年次有給休暇を取得することが可能です。

休業や休暇などの考え方については、弊所の過去のコラムでも取り上げておりますのでご参照ください。(https://www.sr-okamoto.com/column/926

育児休業期間中は年次有給休暇を取得できないことについて理解し、前もって長期間休むことがわかっているなら、時効消滅する日数分は前もって年次有給休暇を取得しておくのもかしこい方法かもしれません・・・!
年次有給休暇を適切に管理するにあたり、育児休業期間中など、長期間にわたり休業していると適切な管理が特に難しくなりますので注意が必要です。

疑問や質問などございましたらいつでもわたしたちにご連絡ください!

藤井

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