事務所便り

令和4年12月号

割増賃金率50%の引き上げに向けて求められる取組み

大企業ではすでに、1ヶ月60時間を超える法定時間外労働に対して50%以上の割増賃金率による割増賃金の支払いが求められていますが、いよいよ2023年4月より中小企業にもその適用が拡大されます。以下では、時間外労働が多い企業において、施行までに求められる対応を確認します。

 

■ 時間外労働の削減

2023 年4 月より、中小企業も含めたすべての企業において、1ヶ月60 時間を超えた法定時間外労働に対する割増賃金率が50%以上に引き上げられます。あくまでも月60 時間を超えた部分に対する割増賃金率の引き上げですが、例えば時間単価が1,500 円の場合に、割増賃金率が25%から50%に変わることで1時間当たりの賃金額は1,875 円(25%)から2,250 円(50%)となり、引き上げのインパクトは小さくありません。
なお、月60時間を超える法定時間外労働が深夜労働に及んだときは、深夜労働に対する割増賃金の支払いも必要となることから、割増賃金率は75%(25%+50%)以上となります。 長時間労働の防止および人件費の増加という観点から、企業はできるだけ時間外労働を削減しておくことが求められます。削減に向けた取組みとして、以下のようなポイントが挙げられます。
・付き合い残業はないか
・残業が従業員任せになっていないか(今日中にやらなければならない業務なのかを上司が確認し指示を出しているか)
・人員体制を見直すことはできないか
・機器等の導入・見直しにより業務のやり方を変えたり、生産性を向上したりすることはできないか
・社内の業務フローに問題はないか(営業が無理な契約で受注し、後工程の業務を行う部署にしわ寄せがいっていないか等)

 

■ 人件費の確認

前述のとおり、割増賃金率の引き上げは、人件費の大幅な増加につながります。そのため、例えば過去1年間の時間外労働の時間数が同じであった場合、人件費がどのくらい増加となるのかを試算しておくとよいでしょう。また、人件費の内容を経営会議のような場面で共有し、現場の管理者にも人件費への影響 について認識をもってもらうことで、時間外労働の削減の必要性を共通認識にすることができるでしょう。

 

■ 36協定の取り扱い

時間外労働・休日労働に関する協定(いわゆる36協定)において、特別条項を設ける場合、限度時間を超えた労働に係る割増賃金率を記載する欄があります。2023年4月以降に割増賃金率が変更となりますが、36協定には月60時間を超えた割増賃金率を記載する必要はないため、協定期間が2023年4月をまたぐ場合であっても、届出をし直す必要はありません。
時間外労働の削減の前提として、会社は労働時間を適正に把握することが必要です。適正な労働時間を記録するように社内教育を行ったり、労働時間の記録とパソコンの使用記録など労働実態との乖離がないかを点検したりするなどの取組みも行いましょう。

 

有休取得率の上昇 かつてと今

厚生労働省の令和4年就労条件総合調査が公表され、令和3年の年次有給休暇の平均取得率は58.3%と、昭和59年以降では過去最高となったそうです。
労働者一人平均では17.6日の年次有給休暇が付与され、10.3日が取得されました。また、年次有給休暇の計画的付与制度がある企業割合は43.1%で、付与日数は「5~6日」という企業が71.4%と、最も多くなっています。

 

■ 取得率上昇の背景は

今回、有休の取得率が最高となったのは、背景にコロナ禍があるのかもしれません。また、2019年4月の労基法改正により、年5日以上の有休取得が義務化されたことも大きいでしょう。

 

■ 前回取得率が高まったのは平成3~4年ごろ

平成3~4年ごろの世界情勢としては、イラクのクウェート侵攻・湾岸戦争、ソ連の解体などがあり、国内ではフリーターの増加などが問題となっていたり、雇用過剰感が高まり失業者数が増加したりした時期です。こう見ると、景気の後退期に取得率が上昇するという見方もできるかもしれません。
また、昭和63年に労基法が改正(法定労働時間が1週40時間、1日8時間に)され、労働時間短縮の流れが続いている時期であったことも大きな要因でしょう。

 

■ 前々回に高かったのは昭和59年ごろ

これまで取得率が最高だったのは、昭和59年ごろです。景気は比較的安定していたようです。この時期は週休二日制が拡大していく時期であったことが、取得率の高さの背景にあるかもしれません。
これらを見ると、昭和と平成以降とでは、世界が違っているような感じがしますが、背景に労働時間等に関する法律改正があることは共通しています。
年次有給休暇や労働時間に関する規定だけではなく、その他の規定についても、自社の就業規則や社内体制に昭和や平成の時代のものが残っていないか、一度チェックしてみましょう。見直しについては、弊所にお気軽にご相談ください。

弊所よりひと言

本年もあと1か月を切りました。毎年、年始に目標設定してもある統計によれば、目標を達成できる人はわずか8%程度だそうです。目標を掲げて、コツコツと努力することは本当に難しいですね。
私も年始に二つ目標を掲げました。一つは、電気工事士2種免許を取得すること、もう一つはハーフマラソンを走ること。現段階での目標達成度は、最初の電気工事2種は、ペーパー試験は合格しまして、実技試験は今月に受験予定ですので、達成度50%。また、ハーフマラソンは全く走っておりませんのでこちらは達成度0です。来年も目標を掲げても、やり方や思考方法を変えなければ結果は同じような気がします。改めて今年の成長と反省を総括し、来年に活かせるように振り返りたいと思います。

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