2026年4月より健康保険の被扶養者の認定方法が変更されましたので解説をいたします。一言で言えば、「実際の収入」ではなく「契約内容」で扶養に入れるかどうかを判断するようになった、ということです。
これまでは、残業代も含めた「実績」や「見込み」で判断していたため、繁忙期に少し頑張りすぎて130万円を超えると扶養から外れるリスクがありました。これが「働き控え」の原因となっていたのです。
今回の改正で、そのルールが大きく緩和されました。
2026年4月1日以降、給与収入のみの方は、「労働条件通知書(雇用契約書)」に記載された内容をもとに年収を計算します。
• 判定に使うもの: 時給、1日の労働時間、週の勤務日数など、契約で決まっているもの。
• 判定に含まないもの: 突発的な残業代、臨時的な手当など、契約時に予定されていないもの。
つまり、契約上の計算で年収130万円(※対象者により異なります)未満であれば、仮に繁忙期に残業が発生して実際の年収が一時的に130万円を超えたとしても、原則として被扶養者のままの取扱いになります。
今回の改正に合わせて、年齢による基準額の違いも整理されています。特に学生(19歳〜22歳)の基準が大幅に引き上げられている点に注目してください。
原則(一般の配偶者など)……130万円未満
19歳以上23歳未満(学生など)……150万円未満 ※1
60歳以上 または 障害者……180万円未満
※1 配偶者を除きます。また、この基準は先行して2025年10月から段階的に導入されています。
社内でよくあるケースを例に見てみましょう。
【事例A】:繁忙期の残業で130万円を超えそうな妻
夫の扶養内で働くパート社員のAさん。時給1,200円、週3日、1日6時間勤務の契約です。
• 契約上の年収: 約112万円(1,200円 × 6時間 × 156日) ⇒ 130万円未満でOK
• 実際: 2026年は人手不足で残業が月20時間発生し、実際の年収が135万円になった。
これまでは扶養から外れる可能性が高かったケースですが、2026年4月からは、契約上の年収(112万円)が基準内であるため、扶養にとどまることができます。 「残業代」が契約外の突発的なものであれば、認定に影響しません。
【事例B】:大学生のアルバイト(20歳)
従業員のお子さん(大学生)が、塾の講師で稼いでいるケース。
• 契約上の年収: 145万円
以前は130万円を超えるとアウトでしたが、新ルールでは150万円未満であれば扶養に入れます。 親御さんの社会保険料負担が増える心配をせずに、学費や生活費のために働くことが可能です。
● 契約ベースでの判断ですが、実態と乖離している場合は被扶養者認定を取り消される
被扶養者になるために「労働条件通知書」では被扶養者の範囲内とされているが、実態は臨時的とは認められない恒常的な残業があるケースは被扶養者の認定を取り消されます。
● 交通費は「年収」に含まれる
税金(所得税)の計算では交通費は非課税ですが、健康保険の扶養判定では交通費も「収入」に合算します。契約ベースの計算をする際、交通費込みで基準額を超えないか確認が必要です。
● 副業(事業収入)や年金がある場合
この「契約ベース判定」が適用されるのは、基本的に「給与収入のみ」の人です。自分で事業をやっている場合や、年金を受け取っている場合は、従来通りの合算判定となります。
健康保険の被扶養者の認定の相談を受ける際に、同時によく受ける相談として、被扶養者自身が働いている会社において社会保険に加入する必要があるかどうかという問題があります。
現在、従業員数51人以上の企業においては、週の所定労働時間が20時間以上、かつ賃金の月額が8.8万円以上などの条件を満たしていると、社会保険に加入しなければなりません。
つまり、年間収入が130万円未満だとしても、上記の加入要件を満たしていた場合は、被扶養者になるのではなく、本人自身が社会保険に加入しなければならないということになります。
なお、政府は2027年以降、企業規模要件(50人超)を段階的に撤廃し、最終的に2035年にはすべての企業を適用対象にする方針です。
□ 2027年10月以降: 36人〜50人の企業も対象。
□ 2029年10月以降: 21人〜35人の企業も対象。
□ 2032年10月以降: 11人〜20人の企業も対象。
□ 2035年10月以降: 10人以下の全事業所。
将来的に被扶養者となるのは、無職か週に20時間未満までしか働かない人に限定されます。
被扶養者を減らして被保険者を増やし、社会保障制度を支えるという方針であるのは理解できますが、社会保障制度全般については企業及び現役世代の負担が大きいことも考慮した今後の制度改正に期待したいところです。
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