事務所便り

令和7年5月号

休日と休暇の違いについて

「休日」と「休暇」は明確に区別していますか。両者はどちらも「仕事を休む日」ですが、労働義務の有無という点で異なり、賃金計算や労働時間管理に大きく影響します。

 労働基準法上、休日と休暇は別の概念として定義されています。休日とは「労働者が労働する義務を負わない日」を指し、会社が法令に基づき与える休日(法定休日や所定休日)が該当します。一方、休暇とは、もともと労働義務がある日に労働義務が免除される日であり、年次有給休暇や育児・介護休業などがこれに当たります。

■ 月平均所定労働時間への影響

 月平均所定労働時間は残業代計算に用いられる重要な指標です。一般に、1ヶ月の平均所定労働時間は下記のとおり求められます。

  年間所定労働日数 = 365日 − 年間休日数(※年間休日には週休や祝日など休日が含まれる)
  月平均所定労働時間 = 年間所定労働日数 × 1日の所定労働時間 ÷ 12

 年間休日数が多いほど年間所定労働日数は減少し、月平均所定労働時間は短くなります。したがって、年間休日数が多い企業ほど1時間当たりの基礎賃金(=月給÷月平均所定労働時間)は高くなり、残業単価も上昇することになります。

 年間休日125日の場合:1日の所定労働時間を8時間、月給を24万円とすると、(365–125)×8÷12=160時間となり、1時間当たりの基礎賃金は240,000÷160=1,500円となります。
 年間休日100日の場合:同条件で(365–100)×8÷12≈176.7時間となり、1時間当たりの基礎賃金は240,000÷176.7=1,357円となります。

 以上のように、年間休日数が20日増えると月平均所定労働時間が約16.7時間短縮し、1時間当たり賃金が約10%上昇する計算となります。休暇(有給休暇など)は労働義務のある日が免除される日であり、計算上は労働日数に含まれるため、年間休日数には含めない点に注意が必要です。

■ 時間外労働の基礎単価への影響(割増賃金計算の概要)

 時間外労働(残業)に対する割増賃金は、1時間当たりの基礎賃金に法定の割増率を乗じて計算されます。1時間あたりの基礎賃金は「月給÷月平均所定労働時間」で求められます。時間外労働の割増率は労働基準法で次のように定められています。

  法定時間外労働(1日8時間超・週40時間超): 25%以上(ただし1月60時間超の場合は50%以上)
  法定休日労働(週1日の法定休日に労働): 35%以上
  深夜労働(22~5時): 25%以上

 また、会社が独自に定めた所定休日に労働させた場合、通常は割増賃金は発生しません。ただし、1日8時間・週40時間を超えた分は「時間外労働」として25%以上の割増が必要となります。つまり、所定休日でも法定労働時間を超えた場合は25%、法定休日の場合は35%の割増を適用する必要があります。
 残業代の計算式は「残業代 =(月給÷月平均所定労働時間)×割増率×残業時間」で表されます。例えば、1時間あたり基礎賃金が1,500円であれば、法定時間外残業時には1,500×1.25=1,875円、法定休日労働では1,500×1.35=2,025円が1時間分の支払額となります。休暇はそもそも労働義務のある日が休みになるので、残業計算では年間休日数に含まれず、割増賃金の算定にも直接は影響しません(休暇中は通常賃金が支給されます)。

■ 実務上の注意点

 ≪就業規則での明確化≫
 休日・休暇の定義と日数を就業規則に明確に規定し、従業員に周知すること。特に、複数ある休日(日曜・祝日など)がある場合には、どれを法定休日とするかを定めておく必要があります。

 ≪文書間の整合性≫
 就業規則、雇用契約書、求人票などで休日・休暇の日数・名称が異なるときは、労働者に最も有利となる規定が適用されます。例えば、就業規則で休日130日とされている会社で契約書に「休日110日+休暇20日」と記載がある場合、130日が優先されます。

 ≪混同による計算ミスの防止≫
 休日と休暇を混同すると残業代計算に誤りが生じます。残業代計算では「年間休日数には休日を含め、休暇は含めない」ため、この区別を誤ると未払い賃金のリスクが生じます。実際に休日と表記された日(夏季休暇等)をすべて休暇扱いすると、休暇取得者にも賃金が発生すると解釈される恐れがあります。

 ≪管理・運用の徹底≫
 人事・勤怠システムで休日・休暇の区別を正確に管理し、賃金計算ルールとズレがないか定期的に確認すること。振休や代休の付与要件や、深夜・時間外勤務の記録と賃金支払いを正しく反映させる運用が求められます。

■ まとめ

 以上まとめると、休日は労働義務が生じない日であり、休暇は労働義務がある日に免除を受ける日です。休日の日数(年間休日数)が多いほど月平均所定労働時間が短くなり、1時間あたり基礎賃金は上昇します。したがって休日数の増減は割増賃金の計算に直結することになります。法定休日・時間外・深夜などの割増率(25~35%)を把握し、前述の月平均時間を用いて残業単価を算出することが必要です。実務では、就業規則や契約書などで休日・休暇の取扱いを混同していることをよく目にしますので、改めてチェックをしてほしいものです。

弊所よりひと言

 大阪・関西万博が先月より開幕しました。開幕するまではあまり話題にもならず、チケットの売れ行きもいまいちのようですが、私はもう少し空いたら行こうかなと思っていたとき、弊所クライアント様から大阪・関西万博に期間限定でご出展されるとのことで、ご連絡をいただきました。また、あわせてご招待のチケットまで送付いただきました。ありがとうございました。
 万博に出展されるなんてどんな審査があって選ばれるのかはわかりませんが、凄いことだと思います。そのようなクライアント様とかかわる仕事をさせていただき、ほんの少しお手伝いさせていただいているので誇らしい気持ちになりました。
 社労士は直接何かを生み出す仕事ではありませんが、社会に貢献しているクライアント様の下支えをしていることを実感できることは嬉しい限りです。ちなみに出展先は「大阪ヘルスケアパビリオン」です。お時間があれば是非皆様もご覧いただければ幸いです。

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