事務所便り

令和6年5月号

在宅勤務手当を割増賃金の算定基礎から除外する場合について通達が出ました

■ 割増賃金の基礎となる賃金

 割増賃金は1時間当たりの賃金を基礎として、それに割増率を乗じることにより算定されますが、基礎となる賃金に算入しない賃金として、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金及び1か月を超える期間ごとに支払われる賃金が法律に定められています。(※ただし、名称だけで判断されるわけではなく、支払基準等の要件を満たしている必要があります。)
 いわゆる在宅勤務手当については、一般的に、在宅勤務手当が労働基準法上の賃金に該当する場合には、割増賃金の基礎となる賃金に算入されます。


■ 在宅勤務手当を割増賃金の基礎に算入しない場合

 ただし、在宅勤務手当が事業経営のために必要な実費を弁償するものとして支給されていると整理される場合には、当該在宅勤務手当は賃金に該当せず、割増賃金の基礎となる賃金への算入は要しません。
 今回の通達によれば、在宅勤務手当が実費弁償として扱われるためには、当該在宅勤務手当は、労働者が実際に負担した費用のうち業務のために使用した金額を特定し、当該金額を精算するものであることが外形上明らかである必要があります。

  ◆実費弁償の計算方法
   在宅勤務手当が実費弁償とされるために必要な計算方法としては、以下の3つの方法が示されています。
  (1) 別添の国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」で示されている計算方法
  (2)(1)の一部を簡略化した計算方法
  (3)実費の一部を補足するものとして支給する額の単価をあらかじめ定める方法

 在宅勤務手当を割増賃金の算定基礎から除外することは労働条件の不利益変更に当たりますので、法律にのっとって労使でよく話し合うようにしましょう。

【厚生労働省「割増賃金の算定におけるいわゆる在宅勤務手当の取扱いについて(令和6年4月5日基発0405第6号)」】
   本文
   別添


退職代行業者からの退職連絡への対応

 突然、会社に退職代行業者と名乗る知らない者からの電話があり、従業員が退職したいとのことで連絡がきたことはありませんか。ここ数年、退職代行業者を利用しての退職が増えています。


■ 退職代行業者とはどのような組織か

 退職代行を名乗る組織には大きく3つあります。以下に簡潔に特徴を記載します。
  (1) 弁護士
 弁護士事務所が運営している。弁護士に退職業務について委任する。つまり、弁護士は代理人として会社に連絡し、退職代行業務にあたる。弁護士に依頼するため、費用が高い分法律的なアドバイスを受けることができる。
  (2) 労働組合
 従業員が労働組合に加入したうえで、団体交渉として退職を要求してくる。労働組合が以下(3)を運営し提携している場合もある。
  (3) 退職代行業者
 弁護士法に抵触しないように労働者の退職意思を伝える業者。弁護士法に抵触しないためには、代理人としてではなく、あくまで労働者意思の伝達者としての役割に徹している。費用が(1)に比べて安い。

 退職代行業者からの連絡の際にあわせてよく求められるものがあります。
  (1) 年次有給休暇の残日数の確認をして、残日数を取得したうえで退職すること
  (2) 賞与や退職金などの債権の確認をして、その支払いを要求すること


■ 退職代行業者等からの連絡内容を拒否できるのか

 退職代行業者が労働者の退職意思を伝えてきた際に、拒否したとしても退職意思のある労働者が退職を撤回することはまずもってありません。ただし、本当に従業員本人の意思かどうか確認が必要でしょうから、退職届を提出してもらうなりして、退職意思を確かめたうえで手続きを進めていくことが賢明です。

 人材不足から退職意思を会社に伝えても、取り合ってくれない、引き留めにあうことも増えていることから、退職代行業者を利用して面倒にならないで退職しようとする特に若い世代が増えています。年配の方々からは、「今の若い者は退職意思も自分で伝えられないのか・・・。」と言った批判的な意見もお聞きすることは多いのですが、費用を支払ってでも辞めたい人たちがいる限り、退職代行業者はなくならないでしょう。

弊所よりひと言

 令和6年度税制改正により、令和6年分の所得税について定額による所得税額の特別控除(定額減税)が実施されます。それにより、6月1日以降の給与や賞与の支払い時に定額減税をすべての給与の支払い事業者が実施しなければなりません。
 個人的な意見としては、いつもながらなんでこんな複雑な制度にしたのだろうという思いです。減税ではなくて、マイナンバーカードでの銀行登録もある程度の割合でされているのなら、一時金での給付にすれば済んだことが、定額減税のおかげで国税庁、市、各会社が対応しなければならない、つまり誰も得をしない制度設計になってしまっていることに腹立たしさを覚えます。とはいえ、法律改正により、実施しなければならないので、粛々と対応して参りたいと思います。
 ネットde賃金や人事労務freeeをご利用いただいているクライアント様には、わかりやすい動画やマニュアルをご案内したうえで、各クライアント様においてご対応していただけるよう準備を進めております。実施まで1か月を切っておりますが、特に給与担当者様におかれましては、制度の理解や準備をしていただきたいと存じます。
 弊所としては、システムが定額減税への対応をする5月中頃に詳しいご案内をする予定です。時間がない中ではございますが、ご理解いただきますようお願い申し上げます。

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